顎の発育とアレルギー性鼻炎

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口呼吸が顎の発育に与える影響

口呼吸が顎の発育に与える影響

アレルギー性鼻炎による慢性的な鼻づまりは、お子さんの口呼吸を常態化させる原因となります。口呼吸時は下顎が下がった状態が続くため、顔面の筋肉バランスが変化し、顎の発育に深刻な影響を与える可能性があるのです。

顎の発育への影響は歯並び、噛み合わせ、さらには睡眠時無呼吸症候群(SAS)のリスクにまで影響を及ぼします。特に成長期のお子さんではこうした影響が顕著に現れやすく、早期の対策が重要です。適切なアレルギー性鼻炎の治療により鼻呼吸を回復することで、正常な顔面発育を促すことができます。

口呼吸による発育への影響

顔つきへの影響(アデノイド顔貌)

慢性的な口呼吸は下顎の正常な発達を妨げ、「アデノイド顔貌」と言われる独特な顔つきを形成することがあります。本来は咽頭扁桃(アデノイド)の肥大により現れる特徴ですが、アレルギー性鼻炎による口呼吸でも同様の変化が起こります。

アデノイド顔貌の特徴

  • 口元の全体的な突出
  • 下顎が上顎より過度に引っ込んでいる
  • 下顎の後退による顎と首の境目の曖昧化
  • 無表情で常に口が開いた状態(ポカン口) など

歯並びへの影響

口呼吸により上顎の横方向の成長が不足すると、歯が並ぶスペースが狭くなって歯列不正を引き起こします。特に犬歯の萌出スペースの不足により、八重歯や乱杭歯が生じやすくなります。
また、上顎前歯の前突(出っ歯)や、前歯部の開咬(前歯が噛み合わない状態)も口呼吸の典型的な影響です。

噛み合わせ(咬合)への影響

口呼吸による顎の発育異常は、様々な不正咬合を引き起こします。

  • 上顎前突(出っ歯):上顎の過度な前方突出
  • 開咬:前歯部で上下の歯が噛み合わない状態
  • 叢生(そうせい):歯がでこぼこに並んだ状態
  • 交叉咬合:奥歯の噛み合わせの左右のずれ など

機能への影響

不正咬合は見た目の問題だけでなく、咀嚼機能、発音機能、顎関節機能にも影響を与えます。効率的な咀嚼ができないことで消化不良を起こしたり、正確な発音が困難になったりすることもあります。

睡眠時無呼吸症候群のリスク増大

睡眠時の口呼吸は上気道を塞ぎやすいため、睡眠時無呼吸症候群の発症リスクを高めます。お子さんの成長には質の高い睡眠が不可欠ですので、睡眠の質を損ねる睡眠時無呼吸症候群との相性は最悪です。

睡眠時無呼吸症候群による成長・発育への影響

成長期のお子さんの睡眠時無呼吸症候群は、成長ホルモンの分泌低下、学習能力の低下、性格・行動への影響など、様々な問題などを引き起こす可能性があります。睡眠障害が著しい場合は注意欠陥・多動性障害(ADHD)と似た症状を起こすこともあり、誤った診断の原因にもなります。

成長期における早期介入の重要性

顔面骨格の成長は主に12~14歳頃まで続くため、この時期までに適切な介入を行うことで、正常な発育を促すことができます。一度形成された骨格変化は成長期が終了すると修正が困難ですので、早期発見・早期治療が極めて重要です。

お子さんの状態によりますが、就学前(5~6歳)からアレルギー性鼻炎の治療を開始し、鼻呼吸の確立を図ることが理想的です。

口呼吸改善のための治療アプローチ

アレルギー性鼻炎の治療

根本的な原因であるアレルギー性鼻炎の治療により、鼻づまりを改善し、鼻呼吸を回復させることが最も重要です。薬物療法、環境対策、必要に応じて舌下免疫療法などを組み合わせて治療を行います。

歯科との連携

アレルギー性鼻炎の治療により鼻呼吸が改善した後も、長期間の口呼吸により口呼吸が習慣化している場合があります。このような場合は、歯科医院と連携し、以下のような専門的アプローチをご案内することがあります。

  • 矯正歯科治療:噛み合わせや歯列の改善
  • 口腔機能療法(MFT):口唇や舌の筋力トレーニング、正しい嚥下方法の習得

必要に応じて適切な歯科医院をご紹介いたします。

早期発見のポイント

保護者の方には、普段の生活の中でお子さんの以下の兆候に注意していただきたいです。症状が見られる場合は、お早めに当院へご相談ください。

  • 常に口が開いている
  • 大きないびきをかく
  • 朝起きた時に口が乾いている
  • 食事中も口呼吸をしている
  • 鼻づまりが続いている など